「<青春18きっぷ>を手に普通列車で旅を…」というようなことを考える場合…最近は、私は「真っ赤な文字の区間」と勝手に呼んでいるが、駅に掲出の時刻表に赤い文字で記される特急列車ばかりが目に留まり、「普通列車が少な目」または「極端に少ない」と思われる区間に存外な頻度で出くわす…
勿論、「最初から列車運行本数そのものが限定的」という区間も在るが、そういうのとは少し異なるのが、この「真っ赤な文字の区間」である…何気なく時刻表に目を落とす分には、朝から夜まで「1時間に1本?2本?3本の時間帯も?」というような、「普通な頻度」で列車が走っているように見えるが…<青春18きっぷ>のようなもので利用可能な“普通列車”ということでチェックすると…「何故だ!?」ということになってしまう…
小倉から鹿児島までの日豊本線に関して、その「真っ赤な文字の区間」という現象が「最も極端」なのは…大分県南東部の佐伯駅と、宮崎県北東部の延岡駅との間である…
↓臼杵からの列車で佐伯に着いた。臼杵の街を少し歩き、駅に戻ってみれば待機していた列車だった…キハ220は、先行したキハ200をベースに、“1輛運行”が可能なように、車輛の両側に運転台を据えるようにした型だ…
↑赤いキハ220…臼杵・佐伯間は電化された区間だが、“1輛運行”の輸送力が妥当と考えられているのか、この車輛が走っていた。実は前年にもキハ220を見掛け、乗車をした機会も在ったのだが、今般のモノは車体正面のデザインが少し異なっているモノだった…
この日は…「日豊本線を南下して、行ける所まで…」というように考えていたのだが…「真っ赤な文字の区間」という現象が「最も極端」な佐伯・延岡間で、“本数限定”の列車を巧く捕まえなければ、思うように進めない…
↓佐伯駅に掲出の時刻表をチェック…
↑時刻表の左半分…「正しく真っ赤な文字」だ…
この佐伯駅の時刻表…真ん中に“○時”と時間帯が記され、右側は大分、小倉、博多方面の列車の発車時刻が、左側は延岡、宮崎方面の列車の発車時刻が各々記されている…
右側に関しては緑色の文字が目立つ。これは「この時刻の大分までの特急列車で発つと、大分で博多行に接続・乗換が便利」という意味のようだ。右側の赤い文字は、列車本数は少ないものの「宮崎・大分・博多」と長い距離の運行となっている特急列車だ。そして黒い文字は、大分方面との間を往来している普通列車である。
左側…「真っ赤!」なのだが、これは悉く「宮崎方面への特急列車」である。列車の運行頻度そのものは、「地方の、そこそこの規模の街の駅?こんな感じ?」という具合なのだが…一瞬「全部、特急列車なのか?!」と思ってしまう。目を凝らすと…黒い文字の普通列車が朝に1本、夕刻に2本の計3本在ることが判る…普通列車は「1日3本」だけだ…
この時、これを視て「“17時14分”というのに乗車すると…延岡に至ってから乗換えて、午後9時前に宮崎に至ることが叶う」と考えた。更に、夜は「宮崎泊」として翌早朝から活動しようとも思った…
乗車することに決めた列車まで…1時間半弱であったろうか…少し間が在った…駅周辺を何となく歩き、少し古そうな喫茶店が在ったので、そこで一息入れた…
喫茶店の店主氏によれば…佐伯・延岡間の小さな駅に、「正しく“県境”」に相当する地区が在り、そこから佐伯に通学している高校生で「必ず“19時33分”で帰宅」という例が在るのだそうだ…私はその1本前に乗車するが…普通列車はとにかく本数が少ない…
佐伯に至るまで、鉄道や道路の開通以前は「寧ろ船で移動?」と見える地形の車窓を視ながら来たことを話題にすれば、以前に当時80代以上の高齢者と話しをした時、「子どもの時分に船で…」という話題が出ていたこと等を教えてくれた…また佐伯駅周辺は市街からやや外れるらしい…確かにひっそりした感じではあったが…
そういうような話しを聴き、珈琲を頂き、喫茶店の席でノートパソコンを開いて宮崎の宿を予約し、かなり日が傾いた感じの佐伯駅に向かった…
↓「“17時14分”の南延岡行の普通列車が3番乗場」という案内だったので行ってみる…「見覚えが?」と少し首を傾げた…“佐伯”だった行先表示は“南延岡”に切り替わっているが…同じ“キハ220-205”である!!
↑臼杵から乗車して来たキハ220…到着以来、ここで待機し続けていて、改めて南延岡行の列車として佐伯から出発することになる…臼杵・佐伯間がこのキハ220であったのは、実は「車輛を送り込む」という意図だったことが判った…乗車してみれば、臼杵から乗った際の席には先客が在ったので、他の席に陣取ったが…中も全く同じだ…
方向が逆ということにはなるが、以前に延岡・佐伯間を特急列車で通り過ぎたことが在る…
延岡・佐伯間を通過したのは、南宮崎・大分間で特急列車を利用した場面でのことで、陽が傾いてから特急列車で北上し、延岡停車の随分以前に車窓は暗くなってしまっていた。列車が延岡を発車すると、車内に「次の停車駅 佐伯」という掲示が出て、その“次”までが妙に長い…南宮崎・延岡間は、駅間が短く思えただけに、少し妙な感じがした。
夜間に特急列車に乗車していて駅を通過する場面…大概は…暗い窓に自身の姿や車内が映り、その向こうに「駅そのものの灯りが見える」、「駅周辺の様々な灯りが見える」のが普通であると思う。南宮崎・大分間で特急列車を利用した場面でも、宮崎県内、大分県内各地で、通過駅でも「駅周辺の様々な灯りが見える」感じで、駅周辺が“田園”のような感じにしても、「駅そのものの灯り」は見える場合が多かった…
しかし…延岡・佐伯間の場合…「駅周辺の様々な灯り」、「駅そのものの灯り」というようなものが…「判らない」状況で、真っ暗な中を列車が進んでいたのである…或いは…「本当の“山の中”、または崖の下のような沿岸で、山肌と海の間のような場所に鉄路が敷かれている?」とさえ思ったが…地図で視てもそれには該当しない…更に駅も在る…
↓佐伯駅で見掛けたキハ220にも、「途中の主な駅」というようなものが掲出されている…
キハ220が佐伯駅を発つ辺りでは、未だ真っ暗でもなかったが、列車が進むに連れて辺りは直ぐに暗くなった。暗い中、キハ220がライトを煌々と灯し、エンジン音も高らかに進む…
キハ220は“ワンマン運行”だった…何かの用事で移動中と見受けられる人と、通学の高校生、他に私自身を含む旅行者風の乗客が何名かという「些かの空席を残す…」ような按配の車内で、各駅で停車して幾分の乗降が在った…そして判った…佐伯・延岡間は、「日豊本線の沿線」ではありながら、状況が「限られた列車が静かに発着するローカル線」のようになっているのだ。無人駅ばかりで「駅そのものの灯り」が極々慎ましい…“ワンマン運行”で、下車する乗客は運転士に定期券を確認してもらったり、運賃を確かめてお金を運賃箱に入れる等している…この佐伯・延岡間の各駅は山間や田園の中の小さな駅、それも無人駅ばかりなので、「夜間に特急列車で通過」の場面では「とりあえず真っ暗な…」というようにしか視えなかったのだ…
「あの時の疑問は氷解した…」と思いながら乗車していると、列車は延岡に近付いた…宮崎へ向かう列車への乗換は、南延岡でも可能だが、始発の延岡から乗込んでしまう方が好いかもしれないと、延岡で下車した…
↓延岡に着けば、スッカリと「夜!」という按配だ…
佐伯・延岡間…九州東海岸を貫く幹線の一隅でありながら、何かひっそりと「1日3往復」走っている、非常に“ローカル”な味わいの列車が視られる区間だ…
先のことは判らないが…“次”が在るなら、延岡で夜を明かし、延岡・佐伯の、朝の時間帯の普通列車に乗ってみるのも一興かもしれない…
それにしても…「日豊本線を普通列車で縦断」という話しは余り聞かないのだが…原因は、この佐伯・延岡間の普通列車が「1日3往復」、それも朝と夕方なので、利用機会が限定されてしまうということだと、経験してみてよく判った…