名古屋には「記憶に残る建物」が色々と在ると思う。名古屋駅に着いてみれば、駅ビル自体を含めて辺りに巨大なビルが林立しているし、栄地区にもテレビ塔や個性的な外観の構造物が目立ち、かの名古屋城の天守閣も在る。
そうした中で、私としては「最も強く記憶に残っている」のは…
↓これである…
![13386856385_4bc7c72f7d[1].jpg](https://mirage-hdr.up.seesaa.net/image/13386856385_4bc7c72f7d5B15D-thumbnail2.jpg)
↑手前の名古屋市庁舎と、奥の愛知県庁舎である…
名古屋の地下鉄の市役所駅から、名古屋城方面の出口で地上に出てみると、背中側にこれらの建物が在る。
初めて名古屋に立ち寄った2009年のことだったが、「名古屋城が視たい!」と地下鉄で動き、その市役所駅から最初に出た際には背中側だったので判らなかったのだが、名古屋城を視た後に駅側へ引揚げた時、これらの建物が目に留まり「あれは!?一体、何の建物だ!?」と驚いたのだった…何やら物凄く幅の在る道路―名古屋は幅の広い道路が縦横に整備されている印象の街だ…―を横断し、近くに寄ってそれぞれ市庁舎、県庁舎である旨を確かめたのだった…
↓名古屋市庁舎は、真ん中辺りが高くなっていて、遠くから見ると“山”という字のような型をしている…
![13386856955_42e6ea5886[1].jpg](https://mirage-hdr.up.seesaa.net/image/13386856955_42e6ea58865B15D-thumbnail2.jpg)
↑何となく、ソ連時代のロシアで見受けられた“スターリン・ゴシック”を想起しないでもない…
↓塔のようになっている部分の上に、和風な屋根が乗っている…
![13386858065_c8ec93d056[1].jpg](https://mirage-hdr.up.seesaa.net/image/13386858065_c8ec93d0565B15D-thumbnail2.jpg)
↑「普通なビル」と「和風な意匠」が、「一寸、強引?」な感じで混ざっている。
↓市庁舎以上に「!?」と思ったのが県庁舎である…
![13386989523_b5c5f8314a[1].jpg](https://mirage-hdr.up.seesaa.net/image/13386989523_b5c5f8314a5B15D-thumbnail2.jpg)
↑角張った「普通なビル」に「名古屋城の屋根の一部??」というような形状のモノが組み込まれている。
↓何か非常に不思議な雰囲気を醸し出す形状だ…
![13386988863_952919e8fb[1].jpg](https://mirage-hdr.up.seesaa.net/image/13386988863_952919e8fb5B15D-thumbnail2.jpg)
この名古屋市庁舎や愛知県庁舎は、1930年代に登場したものだ。名古屋市庁舎は1933年に、愛知県庁舎は1938年に竣工している。名古屋市庁舎は手続が円滑に進み、1930年代前半を覆った不況の影響も少ない中で竣工したようだが、愛知県庁は着工に至る手続に手間取り、そのうちに不況の影響も在って、随分と苦心しながら着工して竣工した経過が在るようだ…
これらが竣工した後、第2次大戦期を潜ることになるのだが…名古屋は、かの零戦を製造していた三菱グループの航空機工場を擁する等、重要な工業地域であったことから空襲も激しく、戦禍も大きかった―高校生の頃に観た『零戦燃ゆ』という映画で、ヒロインが爆撃で落命してしまう場面が在ったのだが、それが名古屋への空襲という状況だったことを思い出す…―のだから、1930年代の流行を伝える建物がこうして並んで残って今日に伝わり、更に現在でもそれぞれ市役所や県庁の庁舎として利用されているというのは貴重かもしれない…
「普通なビル」に「和風な意匠」を採り入れた独特な様式は、1930年代に流行ったという、「帝冠様式(ていかんようしき)」と呼ばれるモノである。ナショナリズムの台頭を受けて登場した、鉄筋コンクリート造の洋式建築に和風の屋根を載せた和洋折衷の建築様式である。
この“帝冠様式”に関して、個人的にはサハリンのユジノサハリンスクに在る、樺太時代の1937年に竣工した博物館の建物に馴染みが在る。
↓“帝冠様式”の参考例ということで、名古屋の市庁舎や愛知県庁舎と直接には関係無いが、ユジノサハリンスクに在る博物館の画を…2014年1月末の撮影である…「日本の城がロシアに?!」という不思議な感じがするものだが、樺太時代の1937年に竣工した博物館の建物だ…
![12236749715_955074082b[1].jpg](https://mirage-hdr.up.seesaa.net/image/12236749715_955074082b5B15D-thumbnail2.jpg)
↑名古屋市庁舎や愛知県庁舎と比べれば小ぶりな感じの建物ではあるが、1930年代に流行った“帝冠様式”というものを好く伝える建物である…
街の建物…何となくそれらの周囲を通り過ぎることも多いのかもしれないが、よく見ると建てられた時代毎の流行りが反映されていたり、建てた人達の想いが反映されているのが感じられ、興味深いものだ。
名古屋市庁舎や愛知県庁舎は、昭和に元号が改まり、「新たな時代への先進!!」という意気が盛んな中で、国内屈指の大都市を支える地方の役所として立派なモノを造ろうとした「好い意味での気負い」が感じられる建物だと思った。他方で、殊に愛知県庁舎は初めて視た際に「不思議だ…」と大いに目を奪われた…
何れにしても、この名古屋市庁舎と愛知県庁舎は殊更に記憶に残る建物だ…
posted by Charlie at 18:25|
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HDR/2014年3月の旅
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