稚内からサハリンへ…北海道・サハリン両島の最短距離は、宗谷岬・クリリオン岬間で約43kmなのだが、稚内港とコルサコフ港は各々が湾の奥に位置するため、両港を結ぶ航路は158km程度である。フェリー<アインス宗谷>は巡航速度が15ノットとされている。時速で言えば30km弱だ。故に5時間半を要する。「19,800秒」ということになる…ただ、コルサコフ港の埠頭が、繋留にやや時間を要する形状であることから、そこが改善されるともう少し速く到着するのかもしれない…
宗谷海峡というのは、日本海の温かい海水とオホーツク海の冷たい海水が交差する箇所でもあるが、概して水温が低めで、気温との温度差で霧も発生し易い…そうした海域なので「素晴らしい蒼天!!」の中の航海で、加えて「遠景が美しい!!」というのは「なかなかに幸運!!」と思えるものだ…
「稚内からのフェリー」と言えば、利尻・礼文両島へ向かうものがお馴染みだ。あの航路は、稚内港から北西側に進み、ノシャップ岬を望みながら南西側へ向かって行く。対してサハリンのコルサコフ港へ向かう場合には北東側へ突き進んで行く。そのため、稚内・コルサコフ航路の船上からは、「この航路ならでは!!」な眺望が楽しめる場合が在る…敢えて「場合が在る」と綴るのは、深い霧で「よく迷子にならず…」と素朴に思うような中、滑走するように静かな湾内から海峡を目指して進むような場面に遭遇することも多いからだ…
↓出国手続を経て乗船…後部の甲板に陣取る…

↑手前に車輌等の積降を行う埠頭の一部が見え、市街の一部と市街後背の丘陵が見える。丘陵部は“稚内公園”として整備されている辺りで、頂に“記念塔”が見える。時々「灯台ですか?」と尋ねられる代物だが…或いは、この“記念塔”がスッキリ見えていると、視界は良好と言える…因みに、毎年8月の花火大会の際、「港から“記念塔”が見えるか、否か?」が開催の可否を決める要素の一つとなっているという…悪天候の際は、雲や霧で“記念塔”は隠れてしまうのだ…“記念塔”の根元辺りが海抜170m程度らしい…
↓船が北東側の沖へ進むと、次第に市街後背の丘陵の向こうに、日本海に聳え立つ利尻富士の山頂が覗き始める…

↓進むに連れ、利尻富士が見える角度が変わって行くのが面白い…

↓やがてノシャップ岬までの、市街が拡がっている辺りの地形が遠望出来るようになり、後背の丘陵の向こうの利尻富士も、より広い範囲が見えるようになる…

↑こういう具合になって来ると、殆ど「宗谷岬沖を航行中」という按配になって来る…
北海道内を動き回って稚内に至ってみれば…何か「地の果て」というような感じもするのだが…昔は北海道内は沿岸の地形を眺めながら船で移動していたものらしい…かなり古い時代に交易をした人達から、江戸時代に各地を行き交った船乗りや商人、または“北方警固”と称して乗り込んだ武士、更に「知られざる地域」の謎を解明しようと近海に現れた遠い国々の航海家達も、こういうような「丘陵の彼方に高い山が聳え立っている」様を望んだことであろう…とすると…「稚内…海の彼方に…」とでも言ってみたくなる…
やがて船が海峡に出る…「右舷に宗谷、左舷にサハリン」という感じになって来る…ここから到着までが存外に長い…
↓「やや冴えない写真」とも思うが…サハリン島南端部の陸地が左舷に見え始める…

ロシア側領海辺りに至ると、「国境通過証明書」なるポストカード大のカードが記念品として船内で希望者に配布される。戯れに「20枚集めると豪華景品!」と言うが、そういうことはやっていない…
ロシア領海では…色々な船を視掛けるが、驚くのは“LNG船”である。大きい!!十分に離れていても巨大さが伺える…コルサコフ近郊のプリゴロドノエに、サハリン北東海域で掘削された天然ガスがパイプラインで送り込まれ、仰々しい工場で液化されている…それが専用船で運び出されているのだ…
↓コルサコフ港へ着く50分位前から、右舷前方にLNG工場が見える…

↑この工場…年間1千万トン程度を生産し、8割弱が日本の需要家向けであるという…本州方面の大都市で、都市ガスで火を点けて湯を沸かす場合…「1割位はこの工場から出したLNGが入っている」ということになる筈だ…
↓更にコルサコフ港に近付くと、LNG工場は角度の関係で見え難くなる…

↓そして船はコルサコフ港に着岸する…

↑到着する場所は、コルサコフ港の古くから整備されたエリアで、埠頭の基礎は日本時代のモノ…往年の“稚泊航路”の船も発着していた辺りである…
19,800秒…5時間半の航海は“幕”だ…
↓入国手続を経て、この辺りに出て来るまでに存外に時間も要する…

↓ターミナルの玄関前は禁煙…(!!)

↑安着を祝う一服は脇の方で…
「稚内…海の彼方に…」とでも言ってみたくなる航海…時には好いものである!!
posted by Charlie at 07:27|
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HDR/サハリン
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