外国発のニュースというモノは、報道機関のレポーターが近くに滞在または派遣されている状態で伝えられる場合以外は、国内外の通信社が配信するモノを利用或いは参照して伝えられる…
ロシアや旧ソ連諸国が関連するモノに関しては、ロシアの通信社の情報が利用或いは参照される場合が多い。
↓こちらは“老舗”のタス通信のサイト…(ロシア語)
>>ТАСС - Новости в России и мире↓こちらは少し新しいインターファクス通信のサイト…(ロシア語)
>>Новости - Интерфакс実は最近、このロシア関係ニュースが少しだけ目立っている…それもサハリンに関連するニュースだ…
↓インターファクス通信は、サイトに“特集ページ”を開いている。(ロシア語)<サハリンの知事拘束関係>という訳だ…
>>Задержание губернатора Сахалина - Интерфаксこういう話しになると…ロシア全土を活動領域としている通信社の情報も在るのだが、地元密着で報道活動を展開している機関による情報発信というものも興味深い…
↓サハリンのメディアグループで、テレビ放送局を運営するASTVのサイト…(ロシア語)
>>ASTV.RU Сахалинская область. Новости, бизнес, общение, объявления, погода.サハリンに関連するニュース…サハリン州のホロシャビン知事が、収賄の容疑で当局に身柄を拘束され、モスクワに連行された上で逮捕されたということである…
サハリン州というのは、ロシア連邦の“連邦構成体”である。“連邦”というのは、2つ以上の国(“州”など、別な呼び方の場合も多い)(=構成体)が1つの主権の下に結合して形成する国家体制である。
ロシア連邦では、46の「州」(область ; oblast')、9の「地方」(край ; kraj)、3の「市」(連邦市 город ; gorod)、22の「共和国」 (республика ; respublika)、1の「自治州」(автономная область ; avtonomnaja oblast')、4の「自治管区」(автономный округ ;avtonomnyj okrug) と85の連邦構成体が存在する。サハリン州もその「1/85」ということである。
例えば外交、国防、通貨というような「国全般の問題」は連邦政府が扱う。連邦構成体は、「(前述例のような)“連邦政府が専管する事項”以外は何でも出来る」ことになる。連邦構成体である州のトップを“州知事”等と呼び習わすので、日本の都道府県知事と似たようなものと受け止めてしまうかもしれないが…ロシアの“州知事”は、多分日本の都道府県知事より遥かに“偉い”かもしれない…より大きな権能、権威を持っている。因みに…サハリン州に関しては、依然として“州知事”と呼び習わしている他方で、「公式的な職名」として“州政府首班”、“州政府首相”というような呼称を用いている。日本の都道府県で、そういうことはしない…
“州知事”を「公式的な職名」として“州政府首班”、“州政府首相”と呼んでいるのだが…“副知事”は“副首相”と称する。州政府は地域の行政府なので、色々な分野の事務事業を管轄する部局が在る。以前は“局”が設けられ、“局長”や“局次長”という役職者が部局の責任者だったが…何時の間にか従前は“局”と呼んでいた部局が“(担当)省”と呼ばれる―サハリン州の場合…(担当)の呼称がやや長いので、一寸覚え悪い…―ようになり、“局長”は“(担当)大臣”、“局次長”は“副大臣”である…日本の都道府県庁では…「局→部→課」とか、「部→課」とか、極一部に「部→局→課・室」というのも在ったような気がする―この手の呼称を外国語訳するのは、実はなかなかに面倒なものである…―が、機構に関して“省”と称しているのは聞かないし、幹部を“大臣”とは称しない。(もしかすると、何処かの職場に“大臣”というニックネームの方は在るかもしれないが…それは飽くまで、仲間内での戯言だ…公なモノではない…)
「連邦構成体としての州政府」という意識が高まり、それを反映して“州知事”を“州政府首班(または首相)”とし、各行政部局を“(担当)省”と称し、それぞれの長を“大臣”とするようになったのは…今般逮捕されてしまったホロシャビン知事の時代になって以降である。或いは、それだけ“サハリン州”というものが「強く、大きく、豊か」になったことの反映なのかもしれない。
サハリン州に関して、「島々から成る地域」というような表現がロシア語では見受けられる。これはサハリン州内外の人―国外の人も含む…―に向けて、地域に関して言及する場合に登場する場合が多いのだが、より一般的に“雅語”、“枕詞”のようにも用いられる。今般のニュースを伝える中でも「島j間から成る地域の…」という表現が散見した。
「島々から成る地域」というような表現…ロシアでは“○○地方”というようなことを言う場合…とりあえず「大陸の何処か」であることが前提で、地域の特徴に言及するなら、「○○川が…」、「○○湖が…」、「○○高原が…」というような地形や、その他の文物や目立つ産業に言及するのが普通であろう…そういう世界で言う「島々」という表現…ロシアでは“エキゾチック”な感じ、“異国情緒”のようなものを帯びて聞こえるであろう。「島々」という表現以外にも、モスクワ辺りで、例えば「フェリー」、「埠頭」、「防波堤」、「港」というような用語が会話の中で何度か出ると、「エキゾチックなお話し」という感想が述べられる場合が在る筈だ…
サハリン州はそんな、ロシアの中では“異国情緒”さえ漂うような、他の地域から遠く隔たった「マイナーな地域」かもしれない。しかし、今では「大変に金が動いている地域」となっていることは間違いない…
現在の知事の先代の知事は、サハリン州に関して「ロシアの成長点」と形容することを好んでいた。2000年代半ば、サハリンはロシア国内でも目立つ程度の“成長”を見せていた。
サハリンで石油・ガス資源が取り沙汰されたのは随分古い話しだ。北部での油田は1920年代頃からの歴史を有している様子だが、海での資源開発の可能性が持ち上がったのは1970年代であるという。当時は、半年近くも流氷に閉ざされる場合がある海域での資源開発についての技術的困難さや、やり遂げることが叶ったにしても採算が合いそうにないという事情で、誰も着手しなかった…時が流れ…1990年代に入った辺りでは、流氷の海域での開発という技術的側面に関しては、北進を続けた北海油田の開発や、アラスカでの油田開発というような“経験”を業界が蓄積していたことで「出来る!」ということになっていて、資源市場の状況も変わっていて「採算はきっと取れる!」という情勢となっていた。加えて、ソ連体制を捨て去ってから日が浅かったロシアは「豊かな財産」である資源を輸出に振り向ける等して、国の経済の可能性を高めようと懸命だったという事情も“後押し”した…
こうして1990年代に「資源開発に着手」ということになり、2000年代に入って「いよいよ石油やガスの出荷を目指し…」と開発は勢いを帯びた。開発は、資源が出る現場だけで何やら蠢くのではない。道路や港湾の整備も発生する。そして関係者の地域への出入りも増える。宿泊施設や飲食や、その他色々なサービスへの需要も生まれる。様々な分野の雇用が発生し、人々の所得も上がる。やがて、膨大な資源を背景に国際的な発言力を強めたロシアは、1990年代の「ポストソ連の混迷」を脱け出す。そうした中で、当初は余り顧みられなかった「資源の地元を含む国内利用」という構想も実現性を帯びる。地元では更に様々な工事が発生する。サービス業も隆盛が続き、所得増加を受けて商業も賑わう。そんな“好循環”が生じたのが2000年代のサハリンだ…
因みに…稚内・コルサコフ航路の乗客について、「日本人対ロシア人」の割合で、「ロシア人が多数派を占める」状況になったのは、前知事が「サハリンは“ロシアの成長点”」と色々なスピーチで話していた2006年のことであった。それは経済の“好循環”の最中であった…
既にサハリンは“エネルギー庫”の様相を呈している…方々に石油や天然ガスを輸出している…資源の輸出による売上げそのものは関係企業のモノだが、そうした企業が“超優良納税者”としてサハリンに立地している…よって「大変な金が動く」ことになる…民間のモノであれ、公共的なモノであれ、少し規模が大きな建設工事が目白押しなのだ…
公共的なモノに関しては…収賄のような事柄が見受けられると、随分囁かれているらしい…今般の「知事の逮捕」の半年以上も前から、「大掛かりな捜査が進行中」と上述の地元メディア等は伝えていた…
ロシアが現在の制度になって、連邦構成体クラスの地域の首長が「在職で逮捕」という事例は初めてらしい…拘束時の状況として、どうも朝に何時ものように執務室に入ったところで、当局者が現れて事情を話して「御同行願います」となったようだ…
一部には「大変な功労者の知事を、このまま放逐するようなことが、善いのか?」という声も上っている様子ながら、「根が深い“問題”の存在?」という声も強い様子だ…本件がどのように進展し、どのような影響をもたらすのか、今の時点ではやや情報不足である…現地での反応も、「とりあえず静観する以外に、何が出来るでもない…」という状態であるらしいし、トップを欠いた状況の州政府は、副知事の1人を代行に立てて淡々と業務を遂行するばかりだ…ただ、彼の国では特定案件に関る関係者が少なめで、些か“属人的”に仕事を進める傾向が在るように見受けられるので、もしかすると何かの業務に影響が出て来る場合が発生しないとも限らないが…それさえも、現時点では何とも言い難い…
それでもサハリンは、今でも“成長点”ではある。例えば…ユジノサハリンスクでは、アイスアリーナが2つも新たにオープンし、各々を拠点とする2つのアイスホッケーチームが活動を本格化している。そんなモノを1つ維持するだけでも大変だ…それが「2つ」なのだ!!1つは、ロシア全土や旧ソ連諸国や欧州諸国の、若手で構成するチームが参加するリーグのチーム…もう1つは、日本、韓国、中国のチームも参加するリーグのチームである…何れのチームも「シーズン中の試合の移動経費だけで幾らだ?!」というような活動を展開しているのである…それを思うだけで、「サハリンの勢い」が察せられようというものだ…
「関係リンク等のメモ」のつもりだったのだが、思い付いたことを色々と綴ってしまった…